先日、とあるポストが人気を博していた。
「態度が悪いが10人分以上の生産性のある人」と「態度はいいが凡庸な人」、あなたならどちらを採用したいか?──というものだ。
いろんな意見が飛び交っていたが、外食産業に進行形で身を置く私としても、どうしても意見を述べたくなった。結論から言う。
絶対に態度の良い凡人。
絶対である。
異論の余地はない。
仮にである、仮に10人分の仕事ができたとしても(飲食の現場でそんなことはまずあり得ないが)、態度の悪い人間は、必ずプラスよりもマイナスの影響の方が大きく出る。
それが現場というものである。
態度の良い凡人は、協力して働くことができる。
能力に優劣があったとしても、飲食の現場において「1人」という人数はものすごく大きな力を持つ。
1人が抜けただけで回らなくなることも、1人が協力するだけで劇的に楽になることも、現場では日常茶飯事だ。
態度の悪い人を雇うデメリットを具体的に挙げていこう。
態度の悪い人がいるデメリット
① 周りからの苦情、退職、顧客離れ
態度が悪い人は、仕事ができるかできないか以前に、「周囲の人々のストレス源」になる。
真面目に働くスタッフからは当然苦情が出る。
スタッフ同士で直接本人に言えばいい、と思うかもしれないが、そう簡単な話ではない。
仕事自体はできてしまうからこそ、周りの人間は態度に関して言いにくいのだ。
では誰に言うか? そう、店長であるあなただ。
また、従業員だけではない。
純粋に食事を楽しみに来たお客様からも、態度の悪さに対して苦情が寄せられる。
これは当然のことだ。
クレームに対応するのは誰か?
これもまた、店長であるあなたである。
つまり態度の悪い人間がいると、当然接する人々も態度や機嫌が悪くなっていく。あなたも含めてである。
② 店長自身の仕事が増大する
態度が悪くても仕事ができるなら、店長の仕事は減だろうか?
いや、むしろ逆である。
日常のルーティン業務なら、たしかにその場その場では助かるかもしれない。
だが、トラブルが発生した時、状況は一変する。
周囲へのフォロー、事実確認、本⼈との面談、改善指導書や同意書の作成。
こういった対処業務が、途端にあなたの仕事を圧迫する。
精神的にも肉体的にも、負担は一気に跳ね上がる。
そして、いよいよ退職させるという段階になれば、また別の問題が生まれる。
人手が足りない期間、自分が現場に立って穴埋めをする必要もあるだろう。
本末転倒である。
③ 本人への機嫌取りという無駄な労力
問題児がいると、ケアが必要なのは周囲だけではない。
問題児本人へのケアも求められる。
態度が悪い人間は、何の理由もなく態度が悪い。
環境が悪いわけでも、人間関係が悪いわけでもないのに、態度や機嫌だけは悪い。
そして、職場の空気を悪化させる。
であるからこそ、本人のご機嫌取りという本来不要な仕事が発生してしまう。
──なぜ問題児の機嫌に、周囲が振り回されなければならないのか?
本末転倒にもほどがある。
まとめ──凡人でいい
ここまで述べたことを踏まえて、再度結論を言おう。
凡人でいい。
いや、むしろ凡人がいい。
そもそも態度がいいというのは、実は優れた人間の持つ特徴の一つであると、私は思っている。
仕事ができるとか、特別なスキルがあるとか、そういう話の前に、「周囲と協調して働く」「当たり前のことを当たり前にやる」というのは、圧倒的な才能である。
ましてや外食産業の現場において、10人分の仕事ができるような超人は存在しない。
それができる人間は、そもそも飲食にいない。できて2人分(これでも出くわすと超人)である。
もし本当にそんな人がいるなら、個人で独立して成果主義の世界で生きていける。
個人の飲食店ではない、外食産業の現場には、そんな超人はいらない。
必要なのは、協力できる人、人を害さない人。
機嫌が安定していて、周囲を疲弊させない人。
「誰でもできる仕事だ」と、外部の人間から揶揄されることもある飲食業。
だが、誰でもできる仕事であるからこそ、態度や機嫌の良さ、真面目さが価値を持つ。
外食産業は、凡人が報われる場所であって欲しい。
真面目に、誠実に、周囲を尊重して働く。
そんな当たり前を積み重ねられる人間が、きちんと評価される世界であって欲しい。
それができる人は少なくとも慕われ、居場所を確保できる。何度でも言う。
外食産業を信じろ。
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